「お姉ちゃん、私ね、お願いがあるんだ」

栞は生まれた時から難病を患っており、今まで入退院を繰り返していた。
そのため、学校にもあまり行く事はなかった。
楽しいことなんて何もなかった。――なんのために私は生きているんだろう。
窓から見える庭で子供たちが楽しそうに遊んでいる。それを見るたびそうつぶやいた。

そんなある日、姉の香里が一台のノートパソコンを持ってきた。
栞のその足で外の世界を見てくることはもうできない。でもインターネットなら――
香里はそう考えた。そして香里は栞にあるBBSを教えた。
そう、2CHである。
「でね?ここをおして・・・・そうよ。出来るじゃない!」
香里の懇切丁寧な教えもあって栞は2CHの隅々まで食い入るように読んでいった。
「お姉ちゃん!ありがとう!こんな良い物をプレゼントしてくれて!」
栞は今までで見せたことのないようなとびきりの笑顔で香里に笑いかけた。
それからめったに笑わなくなっていた栞はよく笑顔を見せるようになった。

しかし、運命は非情である。
彼女の誕生日も間近に迫ったある日、容体が急変したのだ。
大好きなパソコンを取り上げられICUに運び込まれた。
それから栞は生死の境をさまよった。家族全員で連日病院に泊り込んだ。
ようやく栞が目を覚ましたその日、喜びにあふれる家族を担当医が呼び出した。
そして栞はもう長くないこと、なにかあの子に思い出を残してあげるようにと告げた。

お姉ちゃん、私ね、お願いがあるんだ」泣きむせぶ香里に栞はそう言った。
「なぁに?栞。何でも言ってごらんなさい。」
「お姉ちゃん、私、2CHがみたいな・・・」
香里は素直に栞の要望を聞き入れた。そんなことでこの子が喜ぶなら――と。
手の筋肉がすっかり衰えてしまった栞はおぼつかない手つきでパソコンを起動させた。

そしてかちゅ〜しゃを起動させ2CHに入った。闘病生活で大分、衰弱した栞の体は
マウスを動かすだけで精一杯だ。胸のあたりが痛い。苦しい。目が霞んできた。
そう、この時栞は最後の力を振り絞っていた。これで死んでも良い。2CHが見れるなら。
目が霞んで今何処の板にいるかわからない。でたらめにマウスをクリックした。
そして最後の力を振り絞って画面に目の焦点を合わせた。

「!?・・・え、・・そうなんだ・・そうだ、そうだよね・・・」
「でも、もっと早く、始めて欲しかったな・・・」
そうつぶやく栞。
「お姉ちゃん、私、少し疲れちゃった・・・」
そう言って、ベットに深く体を預ける栞、大きく息を吸いこむ。
「お姉ちゃん・・・」
「ん? なに?」 香里は気づいてる、だが、不思議と涙は出ない。
「私はね、私には間に合わなかったけど、私みたいな病気は治るみたいなんだよ」
「なにってんの、あなただって良くなるわ、きっと・・・」
「お姉ちゃん、わたし悲しくない、みんなが、世界中のみんなが未来を分けてくれるから」
栞は、大きく一つ息をした。

ピーーーーーー
心電図が悲痛な音をたてた。

「・・・・・栞!?」
香里は栞のほうを見る。
―――そこには、ベッドの上で、眠るように、静かに息を引き取っている栞の姿があった。
彼女は安らかだった。まるで微笑んでるように。
「栞!駄目よ!これで終わりなんて!!そんなの嘘よ!ねぇ、目をあけてよ!栞!!」
しかし、そんな香里の叫びも空しく室内に響くばかりであった。
画面には「世界中にどうか、幸せな記憶を UD」の文字。
「うわあぁぁ!!!栞ーーっっ!!」
香里は、その場で泣き崩れた。

「ごめんね、お姉ちゃん・・・私、幸せだったよ・・・」
「私は今から天国に旅立つけど、心はお姉ちゃんとずっといっしょだよ。だから元気出して。お姉ちゃん」

季節はまだ冬だったが、窓の外には穏やかな日差しが栞の顔を照らしていた―――


(注:この作品はコピペからの改変です)



END


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